

皮膚疾患
犬の亜鉛反応性皮膚炎
亜鉛は多くの酵素の補助因子として機能します。代謝経路で重要な役割を果たすため、皮膚の細胞のように、分裂速度の速い細胞にとって不可欠なものです。亜鉛は食事から補給され、体内では十分な量を維持できません。そのためフード中に含まれる亜鉛の量が少ないと、亜鉛反応性皮膚炎と呼ばれる皮膚疾患が起こる場合があります。
亜鉛反応性皮膚炎には、次の 2 種類の症候群があります。1つ目は遺伝性のもので、通常、アラスカンマラミュートやシベリアンハスキーなど北極圏の犬種の若齢犬に見られます。これに罹患した犬では、腸管からの亜鉛吸収が阻害されます。2つ目は、亜鉛が十分に含まれていないフードや、植物性フィチン酸塩やミネラル(特にカルシウム)など、亜鉛の吸収を阻害する成分を多く含むフードを与えられ、急速に成長している大型犬や超大型犬の子犬で報告されています(食事に加えて、カルシウムのサプリメントを与えられ、成長スピードの急速な大型犬または超大型犬の子犬でも発症する場合があります)。
現在の食事を、きちんとした総合栄養食に切り替えたり、亜鉛を補給したりすることにより、多くの場合は症状が解消されます。
キーメッセージ
- 亜鉛反応性皮膚炎の臨床症状には、脱毛、紅斑、鱗屑、痂皮、苔癬化などがあり、多くの場合は左右対称に現れます。通常、病変は、目、鼻、口、耳の周囲に見られるほか、肘や肉球など、圧覚点に現れる場合もあります。多くの場合は、被毛の質が悪くなり、乾燥しています。犬は痒みを感じ、細菌や酵母の二次感染に発展することもあります。
- 適切な感染症の治療に加えて、以下に該当する場合は特別な栄養管理を行います。
- 1つ目の症候群の亜鉛反応性皮膚炎の犬には、亜鉛(硫酸亜鉛、亜鉛メチオニンなど)を経口で補給します。
- 2つ目 の亜鉛反応性皮膚炎の犬については、亜鉛を十分に含むフード、または植物性フィチン酸塩、カルシウム、その他のミネラルを過剰に含まないフードに変更する必要があります(同時に、カルシウムのサプリメントを与えている場合は中止する必要があります)。数週間亜鉛を補給すると、反応がさらに速くなる場合があります。
- 通常、症状は 4~6 週間で改善します。しかし、犬が反応しない場合には次の対応が必要です。
- 亜鉛の投与量や形態を変更する必要があります。
- オメガ 6 脂肪酸であるリノール酸の補給を検討します。
- 亜鉛とリノール酸の併用について、犬の亜鉛反応性皮膚炎ではまだ研究が進んでいません。しかし、健康な犬を対象とした研究では、亜鉛とリノール酸が被毛の質を改善することが示されています。被毛の光沢が著しく改善し、被毛の鱗屑と経表皮水分蒸散量が大幅に減少しました。


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補足情報
Colombini, S. (1999). Canine zinc-responsive dermatosis. Veterinary Clinics of North America: Small Animal Practice, 29(6), 1373–1383.
Marsh, K. A., Ruedisueli, F. L., Coe, S. L., & Watson, T. G. D. (2000). Effects of zinc and linoleic acid supplementation on the skin and coat quality of dogs receiving a complete and balanced diet. Veterinary Dermatology, 11(4), 277–284.