演習シナリオ

ハーマンの診察:大型犬種でときどき後肢跛行があり、遊びたがらないことがある若齢成犬

ハーマンの診察

生後 15 ヵ月、未去勢のオスのワイマラナー

  • ハーマンは後肢の跛行が見られるために受診しています。飼い主によると、跛行は長時間の散歩の後や取ってこい遊びの後で起こりやすいとのことです。ハーマンは立ち止まって歩きたがらなかったり、遊びをやめてしまったりすることがときどきあります。伏せの姿勢から立ち上がる時や、車への乗り降りの際にこわばっているようにも見えます。
  • ハーマンは、幼犬用と成犬用のドライフードを混合したものに、生のステーキの細切れを少し乗せたものを食べています。飼い主はフードのブランドを覚えていませんが、幼犬用のドッグフードも成犬用のドッグフードも大型犬用という表示はありません。また、飼い主は毎日カルシウムのサプリメントも与えています。
  • ハーマンのボディコンディションスコアは 9 段階の 5~6、体重は 36 kg、筋肉量は正常です。
  • 検査時に、左右どちらも股関節の伸展を嫌がるそぶりを見せました。しかし、興奮しやすい性質であるため、反応の見極めはやや困難です。それ以外には健康状態に問題はないように思われます。

体型の評価

Purina ボディコンディションシステム

Purina の 9 段階によるボディコンディションシステムは、犬・猫のどちらにも適用できます。簡単にできるため、獣医療従事者だけでなく飼い主も、体脂肪の過剰や不足を定期的なチェックに使うことができます。このシステムは、多くの場合、ペットの健康と長生きに影響を与える肥満の予防と管理に使用されていますが、やせ過ぎのペットの評価にも役立ちます。Purina ボディコンディションシステムは、世界小動物獣医師会(World Small Animal Veterinary Association:WSAVA)によって採用されており、小動物を専門とする獣医師の間で最も広く使われているボディコンディションシステムです。 

dog and cat looking toward the camera with a blue background

キーメッセージ


  • 定期的に体重測定することは良い習慣であるとは言え、動物の種によって大きなばらつきがあるため、特に雑種の場合は、理想体重を把握することは難しいものです。これを簡単にできるようにしたのが、ボディコンディションシステムです。 
    • 理想的なボディコンディションスコアは、次のように定義されます。 
      • 猫 = 5 
      • 犬 = 4~5 
      • ただし、臨床的には、例外が存在する場合があります。猫の場合、オリエンタル種などの特定種では、理想ボディコンディションスコアが 4 になる場合があります。一方、高齢猫では、6 が理想ボディコンディションスコアと見なされることがあります。 
    • スコアが 5 を超えた場合、ボディコンディションスコアが 1 単位上がるたびに、10~15% の体重の増加することになります。 
  • 体脂肪が過剰になると、慢性的な健康問題のリスクが増大し、最終的には寿命に影響を与えます。ボディコンディションスコアでは、目視と触診で体脂肪を評価するため、体重測定に比べて、ペットの全般的な健康を適切に評価できます。 
    • 理想体型は、(上から見た)胴のくびれ、(横から見た)腹のたるみ、肋骨が簡単に触れることとして定義されます。  
    • Purina の研究では、仔犬期から継続してやせ型の体型を維持することにより、犬の健康寿命が最大で 15% 延びる可能性があることが明らかになっています。
    • 肥満猫は、短寿命のリスクや、糖尿病、下部尿路疾患などの疾患のリスクが増大します。 
  • また、ボディコンディションスコアは、やせ過ぎのペット(特に懸念されるのはシニア猫で、 10~12 歳になる頃からやせ過ぎになる傾向があります)の評価とともに、動物福祉の状況の評価にも役立ちます。 
会話の手始め

「私たちの目標は、ペットを理想的な体型に維持することです。これにより、ペットが健康で長生きできるようになるかもしれません。私たちは診察のたびにペットの体型をチェックしますが、飼い主さんも自宅で定期的にチェックすることができますよ。やり方は簡単です。胴のくびれ、腹のたるみ、肋骨の感触をチェックするだけです。変化に気づいたら、給餌量を変えるといいかもしれません。」

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その他のリソース

Kealy, R. D.,  Lawler, D. F.,  Ballam, J. M.,  Mantz, S. L.,  Biery, D. N.,  Greeley, E. H.,  Lust, G.,  Segre, M.,  Smith, G. K.,  &  Stowe, H. D. (2002). Effects of diet restriction on life span and age-related changes in dogs. Journal of the American Veterinary Medical Association, 220(9), 1315–1320.

Laflamme, D. P. (1997). Development and validation of a body condition score system for cats: A clinical tool. Feline Practice 25(5–6), 13–18.

Laflamme, D. P. (1997). Development and validation of a body condition score system for dogs. Canine Practice, 22(4), 10–15.

German, A. J. (2006). The growing problem of obesity in dogs and cats. Journal of Nutrition, 136, 1940S–1946S.  doi: 10.1093/jn/136.7.1940S

Teng, K. T., McGreevy, P. D., Toribio, J.-A. L. M. L., Raubenheimer, D., Kendall, K., & Dhand, N. K. (2018). Strong associations of nine-point body condition scoring with survival and lifespan in cats. Journal of Feline Medicine and Surgery, 20(12), 1110–1118.  doi: 10.1177/1098612X17752198